フェレットの診療

当院の特色のひとつにフェレットの診療があります。
フェレットが広く飼育されるようになった1990年代より診療に携わり、数多くのフェレットを診察して参りました。これまでの経験を活かしてフェレット、飼い主様のお力になれたらと思っております。
(この先、手術の写真があります。苦手な方はこちらをご覧ください。)

フェレットでみられる主な病気

ジステンパー

ジステンパーウイルス(CDV)による呼吸器、皮膚、消化器、中枢神経系に症状がみられる感染性の疾患です。感染後7-10日で発症し運動失調、麻痺、知覚過敏、頸部の硬直などが起こし死に至ります。致死率はほぼ100%。ワクチン接種により予防する事ができます。

犬糸状虫症(フィラリア症)

蚊が媒介する事で起こる犬糸状虫による感染症。元気がなくなる、疲れやすい、咳、呼吸困難、腹部膨満などの症状がみられ、突然死を起こすケースもあります。蚊が出るシーズン中に予防薬を投与する事で感染を防ぐ事ができます。

消化管内異物

フェレットの消化管内異物はゴム、布類、プラスチック類などの誤飲だけでなく毛玉などもあります。一時的には無症状で過ごせるケースもありますが、嘔吐や排便により排出できなければ食欲低下、嘔吐、下痢などの原因になります。最悪の場合、腸閉塞や消化管穿孔を起こし命にかかわる事もあり、手遅れになる前に手術が必要となります。
無症状であっても胃の中に大量に停留している事があるため、ワクチンやフィラリア予防などでの診察だけでなく定期的な検診をお勧めします。

食欲、元気がなくなったため受診。造影剤検査で造影剤の漏れが確認できたため開腹。
(左)誤飲した異物により腸は穿孔していた。
(右)修復不可能な部位を切除して腸管吻合を行った。ごはんもよく食べて元気になり術後の経過は良好。

リンパ腫

血液中の白血球のひとつであるリンパ球が癌化する血液の癌です。胸腔内リンパ節、腹腔内リンパ節、体表リンパ節、肝臓、腎臓、脾臓など、様々な部位で発生し部位により症状は様々です。発症する年齢は若年齢から高齢までと幅広く、発生部位や年齢などによって経過は異なり、治療により完全寛解するケースもあれば急速に悪化して亡くなってしまうケースもあります。

副腎腫瘍

フェレットの副腎腫瘍は多くのフェレットで罹患するホルモン異常による病気です。2才以上で起こりやすく、脱毛、外陰部の腫大、排尿困難、マーキング、皮脂の分泌過多、交尾行動などが症状としてみられます。診察により内科的な治療でコントロールできるケースもありますが、病名の通り副腎が腫瘍化して腫大した場合などは手術が必要となる事もあります。
飼い主さんから普段と変わりないように見えても潜在的に病気が進行しているケースもあるため、2才を過ぎたら定期的な検診をお勧めします。

脱毛や外陰部腫大などの外見上の症状は認められなかったがエコーにより左副腎の腫大を確認。
(左)腫大した左副腎(白矢印で囲まれた部位)と圧迫された後大静脈(緑矢印)。
(右)摘出した左副腎。
(左)左副腎が大きかったため、左腎(白矢印)を圧迫。
(右)摘出後の左副腎があった部位。左上の写真と同じ部位だが、左副腎が摘出された事で後大静脈(緑矢印)が圧迫されなくなり血流が改善。

インスリノーマ

インスリンを分泌する膵島のβ細胞の腫瘍。大量のインスリンを分泌して低血糖を引き起こします。4才以上での発症が多くみられ、流涎、元気がなくなる、虚脱、低体温、四肢(特に後肢)のふらつき、呼吸促拍、発赤、痙攣などの症状が認められます。症状や経過などにより治療でコントロールできるケースもあれば、突然死していまうケースもあります。

他にも犬や猫と同様に様々な病気があります。毎年の予防だけでなく、定期的な健康診断をお勧めします。